旅すること 走ること 料理すること Vol.06

Text by 大桑 仁

旅すること②

私が20代の頃にジョージルーカスのスタジオ、
スカイウォーカーランチに見学に行った、Hさんから聞いた話。
バブルの頃?だったかな?

ランチと言うだけあって牧場のような広大な敷地にあって、
おおよそ当時の日本の映像業界との格差に愕然としたそうな。
彼が見た編集室には大きな窓があり、目の前には大きな湖が広がっていて、
フラミンゴが飛んでくる景色が見えたらしい。
当時日本は昼夜問わず仕事が出来るように編集室には窓が無かった時代。


こんなに良い景色の中で作業するなんて、
気が散って作業に集中出来なくないですか?
と聞いたところ、そこのエディター曰く、
だって自分たちが作っているのは、人の気持ちを動かすような映像でしょう?
秋に葉の色が変わる様子とか、冬に葉が散る様子とか、鳥が湖に降りる様子とか、
自然を直接見て感じないと作れないでしょう、と言われたそうな。
もう30年ほど前の話だけれど何か心に残るものがあっていまだに覚えている。


人に何かを伝える、伝えたい映像を作るのが私たちの仕事。
だから、自分の肉体で見て感じて聴いて匂って、そして味わった体感の引き出しを、
たくさん持っておくことが大切なことなんじゃないかなと思うのです。


今はGoogle Earthもあるし、ありとあらゆる旅番組もあるし、
ARもVRも進化してきたので、
世界中のあらゆる場所に行って来たような気分を味わうことができるけれど、
やっぱり体験に勝るものなしです。


コロナの今だからこそ、旅した時間がより貴重に思える。
若者よ、この時期が明けたら時間を作ってたくさん旅をしましょう。
私も20代の頃は、仕事漬けだったけれど、
30代になってからプライベートでもたくさん旅をしました。
お金がなくても、時間がなくても、それなりの旅はできると思う。
その場に行って味わった体験は必ず人生を豊かにすると思うし、
目の前の仕事に生きてくると思う。


私もまだまだ色々なところに旅をしたい。
また南極行きたいなぁ。


▼南極大陸にて。

自分サイズの穴を掘って(風避けになる)その中に寝袋で一泊。意外に暖かい。