旅すること 走ること 料理すること Vol.01

Text by 大桑 仁

旅すること①

 
20代の頃は、本当に忙しかったから働いてばかりいた。(酒はのんでいたが)

寝る間も無かったけど、毎日が面白かったから長期休暇をとることを考えたこともなかった。

でも、31歳を過ぎて今の妻と一緒になる時に、働き方改革を問われた。

ちょうど私がスプーンに入った頃である。

普段忙しいのは、まあしょうがないとして、1年にせめて2回くらいはきちんとした休みをとりなさい。あなたは肉体的にも精神的にも相当ハードな仕事をしているのだから。それにそのくらいのタイムマネージメントができなくちゃ駄目だと。

うーむ、その通り。

とはいっても、面白い仕事はたくさんしたいし、だいたい頼まれた仕事を休暇のために断れるのか?相当簡単なことではないぞ、と。

でも、それが結婚の条件である、と言われたので、これは一つの大切なプロジェクトだと考え、素直に前向きに取り組んでみることにした。そしてどうせ旅に出るのなら、ツアーでなく、手配の全てをを自分で楽しんでやろうと。まあ、自分手配の海外ロケが1つ増えたようなもんだと。

 

 

で、新婚旅行は、ケニアの奥地に行った。お金をためるのに半年かかった。

4人乗りのセスナでサバンナに着陸し、妻と大地に降り立って、パイロットがエンジンをとめた時、全ての世界の音が消えたように感じた瞬間を今も覚えている。

そしてその旅を機に、現在まで年に数回の旅を積み重ねてきている。

振り返ってみると、ずいぶんと世界のあちらこちらに行ったなぁと思う。

私は基本的にどこにいても現地の食材で料理がしたいので、条件が許せば、だいたいコンドミニアムか、キャンピングカーに泊る。各国の市場を歩くのは本当に楽しい。

 

 

この時ばかりは普段人に任せていることを全部自分でしなくちゃいけない。

そして、大なり小なり、必ずトラブルに出くわす。初めて経験することを苦手な英語で解決しなくてはいけないことになる。でも、それが意外と楽しいのだ。

結果、そのことが自分の仕事に相当良い影響を与えているような気がする。

仕事で普段使わないような脳のエリアを刺激してくれるからかも知れない。

 

 

少し前はどんな僻地にいっても、日本人に会ったけれど、今は数が減ってきているように感じる。ちょっと内向きになっているのかな?将来が少し心配。

今は韓国の人と中国の人が元気。世界中どこに言っても絶対に会う。

オーストラリアのカンガルーアイランドでキャンプをしていても、南極に行っても。

 

 

20代の経験が将来の形を決めるから、旅に出よ、と言ってもなかなか難しいかもしれないけれど、ちょっと時間ができたら、ぜひ旅に出てほしい。忙しい時にこそ、次の旅の計画をするのだ。

バーチャルでなく、ネット上で見聞きしたことでなく、自分でその場に行って実際に体験したことは、何よりも大きな栄養になり、その人を形作っていくから。