FILM DIARY 2021.02

Text by 二井 梓緒

暇さえあれば映画が見たいスプーン一年生による、
映画評論ブログ#1です。
よろしければお付き合いください。

ーーーーーーーーーーーーーーーー


2020年は660本ほどの映画をみました。
⼊社直前に緊急事態宣⾔が発令され、研修は全てリモートで⾏われ、その中のひとつにとにかく映像に触れようということで映画を⾒る時間も設けられたので、そのおかげで今年もたくさん映画を⾒ることができました。。!
社会⼈感のあるようなないような不思議な感覚のリモート期間でしたが、その中でぐっと集中してたくさんの映像を⾒れたのはとてもいい時間でした。コロナ禍で映画館に⾏く回数は減りましたが、⾃宅で⾒る機会が増え、先⽇ようやくブラウン管を購⼊しました。
今年⾒た映画のなかで良かった作品はいくつもありますが、今⽇は年末に映画館納めとして⾒た『ビルとテッドの時空旅⾏⾳楽で世界を救え!』について書きたいと思います。

『ビルとテッド』シリーズは1989 年から始まった。今回は3作⽬であり最終シーズンである。
まだ『マトリックス』 以前の若々しいキアヌ・リーブスは、いつの間にかお腹が出て、
アレックス・ウィンターはもはやただのおじさんとしか⾔いようがない。そんな⼆⼈を⾒るだけでも笑ってしまうコメディである。
内容としては⼆⼈が時空を⾶んで世界を救おうとするスケールがなんとも⼤きすぎる話なのだが、2020年という年にこのような映画が作られたこと、そしてそれを⾒れたことが本当にうれしかった。
昨年の写真を⾒返してみると、1⽉〜2⽉はこれまでの「当たり前」の⽣活の記録があり、私は⽇々映画館に通い、たまに学校に顔を出して、アルバイトをしていた。3⽉、社会⼈になる前にとロンドンへの旅⾏計画を⽴てていたが、世界では変なウィルスが流⾏っているし、なんだか⾶⾏機も怪しくなってきたと泣く泣く断念した。
もういまでは全てが幻だったようで、⽣活だけでなく、映画製作のガイドラインはコロナを経て⼤きく変わった(ハリウッドは当初、⾁体接触を禁⽌していたがいまではどうなのだろうか)。ガイドラインの規定は厳しく、その費⽤を賄えず製作を中断したインディーズ作品も多くある。こんな状況では、何も⾯⽩くない映画ばかりになってしまうの ではないかと危惧していたのも確かだ。誰も明るくならないニュースが毎⽇流れるのが「当たり前」になってしまったなか、『ビルとテッド』はそんな憂鬱な気持ちを吹き⾶ばしてくれた(おそらく撮影は2019 年頃だろうが、この作品が2020年に公開したことにこそ意味がある)。
おじさんになったキアヌとアレックスは⾃分たちの⾳楽で地球を救おうと奮闘する。奮闘するがそのなかで本当に⼀番頑張るのは彼らの娘たちであり、それには新しい世代への希望も感じ取れた。世界を救うために国境や⼈種はもちろん時代までも越境し、ついには死神と(再)タッグを組む。こんなにも徹底的に世界平和を謳う映画は2020年これ以外になかった気がする。

映画は誕⽣してから100 年という短いようで⻑い歴史のなかで絶えず作られてきた。コロナウィルスを経て⽣活様式 はもちろん、撮影様式も変わっていく。これから作られる映画が⼤きく変わってしまうのか、もしくはそれに抗うのか、全く違った形を提⽰してくるのか、あくまで明るい気持ちで期待したい。



⼤学院ではアッバス・キアロスタミの研究をしていました。たまに批評誌サイトに寄稿したりしています。 ⾒た映画のなかから考えたことなどをこれから少しずつ書いていこうと思います。
⼆井