Spoon リレー・エッセイ #1

Text by 小松 圭介

コロナウィルスが蔓延し始めてから、
私たちの生活はすっかり変わってしまいました。

緊急事態宣言以後は仕事もリモート作業がメインになり、打ち合わせもオンライン。
顔を合わせて話をしたり皆でご飯を食べたり、社員同士が同じ空間でコミュニケーションをとるということがどんどん難しくなっていきました。

そんな頃、

”この際だからお互いの精神距離を
ほんの少しだけでも良いから
縮める試みをしてみよう。”


と記載されたメールがスプーン社員全員へ届きました。
代表の伊藤からのこのメールには、
社員1名1名、リレー形式でエッセイを綴ってみようという提案が。

そんな提案から始まったリレーエッセイ。
本来は社員にむけた形式ばらない文章のため、
ご紹介できるのは限られていますが、
せっかくなので、いくつかUPしていきたいと思います。

第1回目は熟練チーフPMでありPとして駆け出し始めた小松圭介のエッセイを。
ぜひお楽しみください!

* * * * * *

私は文章を書くのが苦手である。
そして本も読まない。


緊急事態宣言でリモートでの作業が増え
社内の交流が希薄になっていた。
そんな中、伊藤さんからの提案で
『スプーン版リレーエッセイ』が始まった。
テーマも文体も各人の自由。


毎朝回ってくるリレーエッセイには、
普段顔を合わせても話さないような内容が綴られていて、
普段全く本を読まない私でも、まるで交換日記を盗み見しているような感覚で、
毎日の楽しみの一つとなっていった。


だが、一人一人とバトンが回って行く中で、
楽しみは一つづつ消えて、その数だけ憂鬱さがましていった。
そして自分にバトンが回ってきた。
憂鬱を超えて苦痛である。頭が痛い。


一文字打っては、一文字消して、
できた文章を読み返しては全て消し。
全く前に進まない。


1分、1時間、そして1日。気づけば3日。
こんなに言葉が出てこないものなのか、、、、
何をしていても「エッセイ」の呪いがのしかかる。
恐怖で視界がぼんやりしてしまう。


みんなのエッセイを読み返す。
日常の体験を元にした鋭い洞察。
ますますハードルが高くなる。


思い返せば、
言葉というものから目を背けて生きてきたように思う。
感覚のみでこれまでの人生を積み上げてきたことに気がつく。
コミュニケーションのプロであるプロデューサーを目指す身として
致命的な欠陥に気がつき絶望し、現実逃避にサウナへ駆け込む。
サウナにハマる。まずい。


「そんなはずはない!」と過去に唯一書いた、
大学時代に行ったインド旅行の日記を十年ぶりに読み返す。
着いた初日に仲良くなった大阪人にインフルエンザをうつされたこと。
そんな状況でも弾き語りをして夢を語る大阪人に元気づけられたこと。
ガンジス川に飛び込んでインフルエンザが治り、シヴァ神を身近に感じたこと。
祭り(ホーリー)を楽しむ外国人として地方新聞の一面に掲載されたこと。
仲良くなったインド人と一緒に車を借りて旅に出て、
気づけばインドマフィアに拘束された日本人と小さな町で噂になったこと。
そんなインド放浪記の最後のページには永遠と家族や友人、しまいにはシヴァ神、
インド、カレー。あらゆるものに感謝して締めくくられていた。
恥ずかしい。どうやら大学生の私は浮かれすぎているようだ。


「そんなはずはない!!」「そんははずはない!!!」と、
過去の文章を漁り続けた結果、気づけば小学校2年まで遡っていた。
わらにもすがる思いで日記を開く。


日本にJリーグが発足した1992年。
僕は三浦知良の大ファンで、カズのいるヴェルディ川崎を応援し、
髪型を真似て、サッカークラブに入り毎日サッカーボールを追いかけていた。
団地の壁にボールを蹴り続けていた日々。


「あぁそうだ。団地で神童と呼ばれていたころだ!」

と久々に感じる自己肯定感。


団地にボールが繰り返し響き渡る音と共に、
ボールを追いかける子供の声。
懐かしさのメロディーに気持ちが舞い上がっているところ
小2の僕は34の僕を地面に叩きつける。

▼図1


JリーグのJが全てロゴになっている。
「Jテスト」ってなんなのか。
いや、全てのJがロゴになっている。
黒と白と赤とで綺麗に塗りつぶされている。

結局、人間の性質はなかなか変わるものではない。
まずは自分自身を受け入れることが大切であることを小2の私から学ぶ。
ちょっとまて。象形文字のようなものが書いてある。

▼図2

自己肯定感を学んだ私は、
言葉で説明出来ないことを一生懸命、
先生に伝えようとしている健気な姿に感動する。

たいせい
になって、
ふっきんを
30びょうかん

▼図3


どうやら小2の私は
ふっきんを理解していたようだ。

なりたい自分になるには、
超えるべき壁は多すぎる。

インドでガンジス川で溺れた時も、
両親を無くしたときも、仕事がしんどいときも。
どんな時もポジティブに変換して、
乗り越えてきた自分の性質を最大限に生かして、
足掻き続けたいと思います。

まずは読書から始めます。